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執筆者の写真shiranuka_fan

地域おこし協力隊員 研修風景~石黒牧場さんにて~


写真提供:地域おこし協力隊員 西村さん


雪や川の氷が解け、

あたたかさを増す白糠町。

時折まだ寒さが厳しい日も訪れますが、

穏やかな日差しに春の足音を感じます。


去年の春に着任し、

今年に入って生涯初となる

〝北海道の冬〟を迎えた

地域おこし協力隊員の西村さん。

冬の間は酪農研修をしている

ということで、

研修先のひとつである

大秋の石黒牧場さんを訪れました。



石黒牧場さんは、

隆行さん、尚子さんご夫婦と、

お父様の一志さん、政子さんの

ご家族で経営なさっています。


実は私、白糠町に来て2年になりますが、

酪農家さんの取材は初めてなので、

とっても楽しみです!


私が訪れたのは午後。

放牧を終えて、牛がご飯を

食べる時間です。



ご飯を食べに牛舎に戻る牛たち。


石黒牧場さんでは

約80頭の乳牛を育てており、

搾乳しているのは現在40頭弱。


その他は仔牛や乾乳牛(※)など

搾乳しない牛です。


(※)母子共に体力を

つけさせることを目的に、

出産約2ヶ月前から搾乳をしないことを

乾乳といい、

その期間を乾乳期、乾乳期にあたる牛を

乾乳牛というそうです。



牛たちは放牧から牛舎に戻ると、

「自分のスペース」に

戻ってきます。


これは誰が教えたわけでもないそうで、

牛たちが自ら“なんとな~くここ”

みたいな感じで決め、基本その場所は、

その牛のスペースとなるんだそうです。



こらこら、お隣がまだ

戻ってこないからって

つまみ食いはいけませんよ。




もぐもぐ夢中です。


牛のエサは大きく分けると、

「粗飼料」と「濃厚飼料」の2種類に

わかれるのだそうです。


粗飼料(そしりょう)とは、

草そのもの、または草をもとに

作られたエサです。

牧草やサイレージ

(牧草を乳酸発酵させたエサ)

などがあてはまります。


濃厚飼料とは、とうもろこしや大豆、

麦やふすま(小麦を製麦したときに出る皮など)、

糠(米ぬかなど)などを原料とし、

粉末状にしたり圧をかけて

加工したものです。




黒っぽいこちらは、

てんさい糖の原料である

ビートパルプをブレンドしたもの。




続いて牧草をあげます。



こちらがビートパルプブレンドの飼料です。




粗飼料に夢中!




濃厚飼料を食べながらチラ見



人間のご飯で例えると、

配合飼料がおかず、

牧草が主食にあたります。


石黒牧場さんでは、

栄養が偏らないように、

日々牛の調子をみながら、

配合飼料と牧草のバランスを

毎日調整して与えているんだそうです。




水待ち。

「早く」と言わんばかりに

顔をくっつけてます(笑)


こちらの水を飲む装置、

外側はおわん型の容器で

内側に押すと上部のパイプから

新鮮な水が出てくる仕組み。

鼻先で軽く押しながら

水を飲んでいます。



こちらは仔牛の授乳の様子。

一生懸命飲んでいます。





そしてこちらがジャージー牛!

やっと会えたねジャージー牛!

お目目くりんくりんやないか!


急にテンション爆上がりです。

実は私、個人的に

ジャージー牛に思い入れがあるんです。


昔、森永製菓で「ソリッド」という

チョコレートを販売していたのですが、

覚えている方、いらっしゃいますか?



これです!


私はこの「ジャージー乳」を使用した

ミルクチョコレートが異常に好きで、

当時こればっかり食べていました。

本当に!こればっかり!


濃厚で、薫り高く、

チョコレートよりなんなら

ミルクの味が勝っている!

なにこれ!飲んでみたいよジャージー乳!


でも、今から30数年前の私は、

ジャージー乳100%の牛乳が

どこで手に入るのか

さっぱり分からずでした。



【ソリッド豆知識】

森永ソリッドは板チョコはもちろん、

当時爆売れしたロッテの

VIPチョコレート・ティラミス味に

対抗して登場した、

中にチーズケーキが入ったものなど

さまざまなバージョンがありました。


その中の一つが、

“ソリッド ダース”。

今販売されているチョコレートの

「DARS ダース」は、

実はソリッドが前身なのですという

豆知識。



私にとってジャージー乳は

「キング オブ 牛乳」。

そんなわけで、ジャージー牛を目の前に、

ついテンションが上がってしまいました。



約600kgほどもあるホルスタインに比べ、

ジャージー乳は約400kgくらい。

国内の乳牛はほとんどがホルスタインで、

その割合は約98.7%。

ジャージー牛の割合はわずか0.8%という

希少な存在なのです(※)。


(ちなみに残りはその他の牛です)


(※)データは(独)家畜改良センターホームページ(平成31年1月度)より



西村さんとの体高差でごらんください。

こちらジャージー牛。



こちらホルスタイン。

大きい!



ジャージー牛はホルスタインと比べると

小柄で搾乳量も少ないのですが、

「乳脂肪分」も「無脂乳固形分」も

ホルスタインを上回っています。


※家畜改良事業団・平成29年度検定成績(305日2回搾乳)(平成31年1月度)の

データをもとに北田が表を作成




そして休憩時間にあの…憧れの…

ジャージー乳100%の牛乳を

飲ませていただきました!!


飲んだ感想は、

「…う…っま~~~~!!!」

です!



「あれ?これ、

生クリームじゃありませんか?」

というほどに、濃厚。

でも決してくどさはなく、

口当たりはあくまでも柔らか。

コクがあって、ほんの~り甘いんです。

鼻腔も優しいミルクの香りで

満たされます。

こんなおいしい牛乳、飲んだことない!!


石黒牧場さんのジャージー乳の

乳脂肪分を伺うと、

「アベレージ5~6%くらい、

授乳中は8%くらい」

とのこと。

なんですって!?


普通に売っている牛乳で3.5%くらい、

「濃い」と言われている商品でも

4%台なのです。


ハー●ン●ッツで使用されている

某町の牛乳でも4.0%。

と考えると、凄まじい濃厚さ!

ジャージー乳…すごすぎます!



続いて仔牛ゾーンへ。

あらあらかわいい。





こちらは先ほどの仔牛たちより

さらに小さく、

レトリバーくらいの大きさでしょうか。

う~ん、かわいい…!




こちらは牧草ロール。

牛たちの主食ですね。

ひとロールで4~500kgもあるんですよ!



こちらは妊娠中の牛たち。

カメラを向けるとわらわらと

寄ってきてくれました。

人間で例えると、10代後半~

左側が20代前半の若い牛たちです。


こちらも好奇心旺盛



夕方の搾乳の時間です。

搾乳の前に牛の乳頭を

絞った布でぬぐって

きれいにします。


牛の乳頭は4本。

長さは5~6cmくらいでしょうか。

この布で拭う作業をすることで、

牛は、「お乳を絞る時間なのね」と

スイッチが入るんだそうです。




こちらが搾乳機。



子牛は母牛の乳頭を

舌で巻くように口に含み、

舌で真空状態を作って

ミルクを吸い上げて飲みます。


乳頭に当たる部分は、

この原理を応用しているんだそうです。





ホースの先には銀色の配管が

巡っています。



管の内部は真空で、搾乳機をつなぐと

乳首から搾乳がはじります。



ミルクは管を通って

処置室にあるレシーバーに集まり、

空気とミルクに分離されたのち、

バルククーラーに集められます。

(こちらはレシーバーと思われます)


ちなみにバルククーラーは

牛乳の貯蔵タンクと

冷却機を組み合わせたもので、

酪農家の1日の平均牛乳生産量より

30%ほど大きいものが必要と

されているんだそうです。



搾乳が終わるとセンサーが感知し

アラームが鳴り、吸引機を外します。


搾乳を終えた牛の乳頭は

牛乳が通った直後のため

普段より開いているので、

雑菌が入ってしまうと

腫れたり化膿したりするんだそうです。

なので、消毒。




この容器には、うがい薬でおなじみの

ヨードチンキ的な殺菌薬が入っており、

この口の部分に牛の乳頭を

ちゃぽんとつけて、消毒します。


この日、拝見したお仕事は

ここまででしたが、

この後も搾乳作業は続き、

牛舎内の掃除や餌やり、

片付けなどを行うそうです。



こちら、お父様の一志さんです。


皆さん、こちらのしっぽのロープ、

なんだか分かりますか?


主に搾乳の時に使用するのですが、

後ろに人がかがみこんで作業する際、

邪魔にならないように、

ロープとつないでおくんだそうです。


私が訪れた時も、後ろを通った時、

しっぽがぺしぺし揺れて

いたずらされました(笑)。



牛を育てるのに一番大切なことは?

の質問に、お父様の一志さんは

「かわいがることかな。

大事に育てれば、健康で長生きするし」

と答えてくれました。



こちらは隆行さん。

穏やかな語り口と、

笑顔がとっても素敵な方です。


奥様の尚子さんと一緒に、

牛のこと、牧場のこと、いろんなことを

教えてくださいました。


今回取材させていただいて感じたのは、

皆さんの牛に対する愛情深さです。

心身の健康を考えて冬も放牧させたり、

初産の時期も早すぎないようにしたり、

乾乳期もしっかりキープしたり。


牛を大切にすることにより、

生産性が向上するのは

もちろんですが、

それ以前に、石黒牧場の皆さんの

「命との向き合い方」が

とても優しく、

私は非常に心打たれました。


皆さん、お忙しいところ

取材にご協力いただき

誠にありがとうございました!


(ジャージー乳もごちそうさまでした!)



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